初恋にまつわるエトセトラ


ここで改めて話すほどの事ではないのですが、自分はかなりの「純情っ子」です。シャイボーイです。
はい、「絶ッッッ対に!嘘だあッッ!!!」と言いたげにしている知人諸君。とりあえず話は最後まで聞いてみよう。
そう、それは「ある一点」に対してのみです。それは……。


「女性がらみ」です。


なんか「女性がらみ」って書くと凄く誤解されそうだし、なおかつイヤな表現の仕方ですがストレートに言えばそうなります。
今でこそ女の子とは普通に…い、いや、まぁまぁ……。…ギリギリ…で話せてはいますが…あれ…涙……?
昔…特に中学校から高校の一年生くらいまではそりゃもうヒドかったです。「黒犬君て女性恐怖症?」とか真顔で言われるくらいですからねー!あれ…涙……?
昔は…女の子から話しかけられたら常にどもりっぱなしだったし、焦って変なこと言っちゃうし、フォークダンスで手繋いだ時なんか緊張しすぎて汗ダラダラだったし、
部活の先輩に「かわいいー!(まぁ昔はね…)」とか言われて追いかけられた時は半泣きで全力疾走でしたよ。ええ。そんな青春。
なんかあの時期って急に女の子を「異性」として意識し始める時だと思うんですが、それが過剰だったんだと思いますね。常にドキドキしっぱなしというか、なんつーか、うまく言えないんだけどさ。ああ、ここまで書いといてもうハズかし過ぎて死にたい。ヤケなんです。ネタのためならッッ!(ぇ


今回はそんなシャイボーイ(?)の初恋の話。
ええ、ネタになるくらいですから痛烈に酷いです。これから思い出すのかと思うと辛過ぎてもう泣きたい。
出来るなら読まないでください。特に俺の知人の方々。お兄さんと約束だ!











俺の初恋は高校二年の時でしたよ。

…「遅ッッ!!」とツッコミを入れたい気持ちはとても分かりますが、だからこそあの前置きなのです。
それまでは意識しすぎて好きとかキライとかなかったので、混乱状態。そもそもそんな人に女の子は近づかんだろ;
それより以前にあったかもしれませんが、ここまで明確なものはありませんでした。「憧れ」に近いかも。
そこまで酷い状態からはとりあえず卒業した頃です。大分落ち着きました。でも相変わらず苦手には変わりない。
その娘とは席が隣になった事があって、彼女はよく忘れ物をする人でした。
よく


「…悪いけど教科書見せてくれない?…今日も持ってきてないや」


と困った顔で言い、教科書を机の間に置くと、


「アリガトね。いつも助かるわー」


と言って小さく笑うのでした。その笑顔が好きだった気がします。向こうは何とも思ってないでしょうけどね。他の人にも借りまくってたし。あ、ちなみにこれから彼女の事を仮に「Aさん」と呼称します。
そんな日々が過ぎ、なんか一人で無意味にドキドキしてた頃。


いつもと変わらぬ朝。クラスの喧騒。チャイム。ホームルームが始まって、「一限は現国か…」とかのんびり思ってたその時、気付きました。何やら不穏な空気が教室内にたちこめているのを。
担任の様子がいつもと違います。なんか妙に落ち着いた表情をして、これから言い辛い話をするかのような、そんな空気。
そして……担任が口を開く。

「皆。真面目に聞いてほしい。昨日の放課後に起きたことなんだが…」
そこで一旦区切り、一呼吸置いて、クラスの緊張も高まる中。



「昨日の放課後、ウチのクラスの女子のジャージに…その、小便をかけた奴がいる」



思考停止。は?なんだそりゃ?皆同じ考えだったと思う。イジメか何かか?そうでないのなら…アブノーマルにも程がある。
クラスの中にはもう知ってる人も数名いるらしく「どこの変態だよー」とか小声で話す声が聞こえました。
まぁでもクラスの人の事とはいえ他人事です。むしろ詳しく知りたいとも思わないし理解したいとも思いません。

「放課後、何か怪しい奴や、この事に関する情報を知ってる人がいたらすぐ知らせてくれ。…もしもこの中にやった人がいるのなら、後で先生の所に来なさい。ホームルームは以上だ」

担任が教室から出て行き、クラス中がその話題で持ちきりになる。「こういう事件って女の子が傷つくから、今回の先生の対応はまずいだろ。犯人探しとか今時する?普通。」とか友達と話していると、


「大丈夫?平気?」


という声が近くで聞こえました。まさか……イヤな予感がしました。その声の聞こえた方向は。
必死でその可能性を否定したい俺。ですが…現実は時として残酷です。
そうです。そのまさか。



俺が声のした方向を見やると、そこには俯いたAさんと、その友達が、必死にAさんを慰めている姿が見えました。



「…………ッッ!!!」
さっきまではクラスの中の出来事とはいえ他人事でした。そうです。確かに。そんなアツくなるほどの事ではないと。
それが、少し事情が変わっただけでこんなにも激情に駆られるのですから、単純です。
しかも、こういう事件は「目撃者か、ソレに関わった人物」が、立場ある人物である第三者にその事を伝えない限り、犯人が露呈する事はまずありえません。しかも、こんな常軌を逸した事をした人物が、間抜けにも明確な証拠を残すはずはありませんし。
…誰がやったのか。それはおそらく、闇に葬られるのです。

ですが、分かってはいても「許せない」気持ちは揺らぎません。
Aさんは結構女子にも男子にも人気がありましたから、集団的なイジメという線は薄いです。イジメってのは水面下で行われているだけですから、その水面下…クラスの中にいる人物には結構「誰のグループが誰をイジメてる」という情報は至極簡単に耳に入ってきます。ですが、Aさんに関するそんな噂はこれっぽっちも聞いたことがありません。
ということは、犯人は「本当に裏でごく少数の、Aさんに悪意を持つ人物」か「アブノーマルな変態」の可能性が高まります。
尚且つ、昨日の放課後、掃除が終わり、生徒が少なくなる時間帯まで学校に残っていた人物。
ですが、現状で推理できるのはここまでです。たったコレだけです。
俺にできることは、数えるほどしか…いえ、何もないです。
Aさんにとって俺は彼氏でも友人でもなんでもない、ただのクラスメイトです。犯人は分からない。
選択肢は「何もせずにほおっておく」しか残されてはいませんでした。
情けないことに、俺ができたのは「やった奴、生きてる価値ねーよ」など、思いつく限りの悪口を並べ立て、ここにいるかどうかも分からない犯人の罪悪感を煽る。その位でした。
それは、最も俺が嫌いで、最低だと思うやり方でしたが。


その後学年集会が行われ、「情報を提供してほしい」「犯人がこの中にもしいたら名乗り出てほしい」という担任が言った言葉と似たような話をされ、解散しました。Aさんも混乱と驚愕の内に、最も身近な頼れる人物であろう「先生」に打ち明けただけだろうに、何故こんな学年の皆を集めて、まるでさらし者にでもするかのような扱いを受けねばならないのでしょうか?
「とある女子」
それは誰なのか。その事を皆が知っているのは先生も気付いているだろうに。
あまりにも酷い。もしこれがAさんを憎む人物の犯行だとしたら、その効果は十分過ぎる程です。
先生を憎むのはお門違いですが、そうせずにはいられませんでした。





数日が過ぎ、Aさんにも笑顔が戻ってきました。
ですが俺は、まだささやかな犯人への抵抗を続けていました。「やった奴は許せない」と。
そんなある日……。





いつもと変わらぬ日々。次の授業は音楽です。友達と雑談しながら階段を上っていくと……
そこには俺の苦手な女子のグループがいました。この人等は以前俺の親友の悪口を言ってた人等で、彼女たちの前で俺が軽くキレたことがあってから、ちょっとした「敵対」みたいな関係になってました。女子も男子も関係ない、そういう状況でニガテも何もありません。
(嫌なのと出くわしたなぁ……)内心でそう思っていると彼女等の視線が俺に。そして、


「来たよ。犯人野郎が」


小声ではありますが確かに、そう聞こえました。




























は?




























ははは。彼女たちは何を言っているのでしょうか。犯人?なんの犯人かなそれは。ぜひおじさんも知りたいな。
あーもうアホやってないで冷静に考えればいいんでしょ!これは緊急事態です。エマージェンシーです(二回も言うな)

最近学校内で「犯人」とか、それに関するようなキーワードが出てくる出来事は、まさにあの事件以外思いつきません。と言うことは彼女等のいう「犯人」とはあの事件の犯人である可能性が極めて高いことになります。
そして、俺は犯人ではありません。あってたまるか。犯人ではないのですから証拠も目撃者もなにも残るはずはありません。なのに彼女等は俺の事をあの事件の犯人とほぼ断定しています。その事から、その推理に至る、重要な事項があるはずなのです。俺に関係ある。
確かにあの日、俺は部活で学校には残っていました。途中でトイレにも行ったと思います。なるほど、確かに俺に犯行は「可能」ではある。ですが、それだけでは断定には至りません。なにか、他に……。


「…あ」


その時、俺はとある致命的とも言えるミスをしでかしていることに気がつきました。
皆さんはお気づきでしょうか?答えは文章の中に隠されています。ヒントは
「Aさんと俺は普段はそんなに話さないただのクラスメイト同士」ということです。簡単すぎましたかね?

答えが分かった人は続きをどうぞ。




















そう、致命的なミスとは、俺が未だに、あの犯人のことを「許せない」と公言していたことです。


客観的に考えて、普段Aさんとほとんど関わりのない人物が、あの事件後、なんか「許せない」みたいな事を日々言い続けています。
「なぜだろう?普段キミはAさんと話さないし、特別仲良くもないじゃないか。どうして?
あ…もしかして、弁解でもしてるつもり?」
…そう考えるのが自然な流れというやつです。俺を嫌ってるならなおさら。


…理解はできました。俺があの忌々しい犯人と同一視され、疑惑をかけられていることに「理解」はできました。
理解できても、はらわたは煮えくり返りそうですが。


今すぐにでも、この女子達に怒鳴りつけたい所ですが、ソレは無理です。
ここで、俺が鼻息荒げて下手に興奮し、思うがままに彼女達を怒鳴りつけてしまったら、それはまさに「俺が犯人説」を強める結果にしかならないからです。
彼女達の中では「確定」ではありません。まだ疑惑です。といっても確定しようがないですが。しかしそんな人間が、彼女達にとっては建前は冗談、本音は挑発発言に引っかかり、ここで興奮してしまったら……「犯人確定」に限りなく近づく状態になることは必至です。彼女達はそれこそ堂々と、「俺があの事件の犯人である」という噂を流すでしょう。
つまり、あの事件の犯人は、Aさんだけでは飽き足らず、Aさんに好意を寄せる俺をも、犠牲者として血祭りにあげたのです。俺は、ただの自滅に近いですが。





俺は、呆然と立ち尽くすしかありませんでした。今もし犯人が分かるのなら、女子だろうが先生だろうが迷うことなく俺はソイツをぶん殴るでしょう。殴るだけでは全然足りないですね。ははは←ヤバイですこの人





その後…ああもう語るのも辛いよ。案の定…というか予想通り、彼女等が「どうやらあの事件の犯人は俺らしい」みたいな噂を流し、Aさんにも伝わりました。
…噂というのは弁解すればするほど袋小路に入りこむものです。仮にそんなものがないとしても、まさか



「俺はやってないよ…!あれは…犯人の事が許せなかったのは…君のことが……好きだから……」



ってそんなこと言えるかーッッッ!!(ちゃぶ台返し)

…この先は大体わかったっしょ!!好きなように想像してくれたまえッッ!!8割方正解だから!!
なに?聞きたい?HENTAI扱いですよッ!へーんーたーいーッッ!!!好きな人に!
教室のすみっこで膝抱えてドナドナ歌いまくりだよコンチキショウッッ!!!(TロT





唯一の救いは俺の友達が、俺の無実を信じ、彼女等と敵対し続けてくれた事です。
ありがとう。キミ達がいなかったら、多分俺、身投げしてた(ぇ





ああもうヤだ!とーさーんッッ!!








…どうだろう。これを読んでくれた人達の中に、これほどまでに壮絶な「初恋話」を聞いた人はいないだろうか?
多分いないと思う。もしいたら、是非教えてほしい。共に泣き明かそう。枯れるまで。



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